資料の解説

「阿蘭陀加比丹並妻子等之図」(おらんだかぴたんならびにさいしらのず)は、1817(文化14)年に出島オランダ商館に赴任した商館長ヤン・コック・ブロムホフ一家を描いた絵画作品です。類似の構図の作品は3点(神戸市立博物館、アムステルダム国立博物館、ライデン国立民族学博物館)が確認されているのみです。江戸時代後期に日本人絵師が描いた、西洋絵画の技法の影響を受けた作品として歴史的、美術史的にも重要な作品といえます。
箱書きには「…阿蘭陀加比丹妻子等召連肥州長崎江致着船候珍敷儀ニ付於 公辺人物写茂被 仰付候由ニテ…」と書かれており、妻子を連れての着任が珍しかったため幕府の役人がその姿を密かに絵師に写し取らせたという、本絵画作成の背景を物語っています。
この資料は、1931(昭和6)年当時、大使館付の士官だったイギリスの歴史家C.R.ボクサーが古書店から入手しました。しかしその後、南蛮画の逸品の海外流失を惜しむ日本の研究者らの要請とボクサー氏の厚意によって東京帝国大学へ買い戻され現在に至ります。

近年、経年劣化による汚れや絵の具の剥離等が見られたこともあり、2016(平成28)から2017(平成29)年度にかけて公益財団法人出光文化福祉財団の美術品修復助成を受けることができ、絵画中の人物や家具等の色彩が鮮やかに蘇った状態でデジタル化を行うことができました。